「さあ、行っくよー!」
 スピカの号令で、ギルド「黄衣の王」の冒険は始まった。
 初めての世界樹の迷宮で、まず与えられたのは一枚の真新しい羊皮紙。これに一階の地図を描くことで、公認ギルドとして世界樹の迷宮の探索が許可されるらしい。
 羊皮紙を受け取ったプロキオンは、手際よく始まりの階段と現在地までの道のりを書き込んでゆく。
 リーダーであるはずのスピカはそんなものには目もくれずに、すたすたと先へと進んで行こうとする。
 そんな少女の前に衛兵が立ち塞がる。
「これより先は、許可を受けたギルドだけが進む事を許されている。まずは一階の地図を作成することだ」
 衛兵の言葉に、スピカが拳を振り上げてくってかかる。
「だからその地図を埋めるために、こっから先に行くんだってば!」
「はいはい、まずはこっちの素人向けの道から行けってことでしょ」
 暴れるスピカの首根っこをつかまえて、シリウスが北へ向かう道を指差す。
「んじゃ、こっちから順番にまわって行けばいいのかな」
 ベテルギウスが手にしたダガーをもてあそびながら、北へと足を向ける。
「しかし、こんな短剣一本じゃあ不安だよねー」
 本来ならば迷宮に入る前に装備を整えるべきなのだが、先走るスピカに引きずられるようにして、ろくに準備もせぬままにここまで来てしまったのだ。
「あーっ! 先頭はあたしが歩くの! リーダーなんだからねっ!!」
 先に歩き出したベテルギウスカノープスを追い越して、スピカが先頭に立つ。
「飛び出したら危ないわよ。こんな入り口近くでも、もう迷宮の中なんだからね!」
 ろくに周りも見ずにどんどん奥へと向かうスピカの隣に、追いついたシリウスが並ぶ。
「うるさいなー。わかってるよ、そんな事」
 子供っぽい様子で頬をふくらませるスピカに、最後尾を歩くプロキオンが小さく笑う。
「新しい、冒険の始まりですね」